2018年10月27日(土) 石川充先生 保護者対応記録

すぐに飽きてしまって、ひとつの遊びに集中できません。

次々にやりたいことが浮かび、色んなことに興味を持つとアドレナリンが出ます。   “ちょろすけさん”で忙しいのはとってもいいことと捉えてください。

こちらの問いかけに対して反応してくれないので不安です。

しゃべらせるのではなく、まずは聴くことを心掛けてください。「どうしたいの?」と聞かれると、自閉の子は不安になります。不安を抱いているかどうかは、目の動き、表情を見ていると感じ取れます。行動させたいときにはハッキリとさせたい内容を提示してあげてください。本人に言わせたいときには選択型の質問で。言葉を引き出すより先に、うなずかせることから始めてください。「これとこれ、どっちがいいの?」と目合わせしてコミュニケーションを取るとこが大事です。

あごの力が弱く、食べさせるのに苦労しています。

食べさせ方のコツは、下あごを押して動かすよりも、人差し指と中指で唇をはさんであげて噛めるようにする訓練から始めることです。嚥下のエキスパートの先生によると寝せて食べさせた方が良いという事例もありますが、少し仰向けの姿勢で飲み込みやすくして指の力で噛ませてあげるのがちょうどいいかなと考えています。噛ませることは唾液の分泌にもつながり、消化も良くなります。

寝ているとき無呼吸になり心配です。

食事で噛めるようになると、あごが発達します。無呼吸を抑えるためには、あごの発達を促すことが大事です。

頭の大きさと体の大きさのバランスが悪く、今後の発達が心配です。

.頭が大きいということは首の座りも遅かったですよね? ゆっくり首が座った子は、背中もゆっくり発達します。うつぶせポーズから四つんばいのカエルポーズなどに発展させて、少しずつ背中を鍛える運動をしていくと良いでしょう。

我が子に具体的な診断名が付かないので、どう対処していいか不安です。

診断名が付かず不安を募らせるより、機能訓練をしっかり行うことが大事です。

箸やスプーン、フォークを使わず、手で食べてばかりです。

食べるのは手づかみでもいいと、ある程度のことは許容してあげてください。無理に直させるのではなく「上手に手を使ったね!」と褒めてあげるくらいの心で接してほしいです。

ふわっと見ている感じで、視点が定まっていないように思います。

目の前に好きなものを出してあげる、赤や黄など目に入りやすい色を出すなど、焦点を合わせる練習をすると良いでしょう。

手の力、指先の訓練をするためにはどんなことをしたら良いですか。

まずは握りやすい形状のものから始めてください。次に形は同じもので材質を変えます。さらに、左右の手それぞれに、同じ形だが硬い・軟らかいものを握らせてみてください。左右の感覚分離によって、手の感覚がきたえられます。

特に公共の場に行くと、母にしがみついていないと不安なようです。このまま受け入れ続けた方が良いのか、引き離す練習をした方が良いのか迷っています。

通常、愛着形成の時期は2~3歳くらいですが、自閉性のある子は愛着形成が遅れてやってきます。中学生や20歳を過ぎてからの子もいます。お母さんにしがみついていないと不安なのは、何かしらの緊張を強いられているからです。そういうことが必要な時期なんだと、公共の場でも受け入れてあげた方が良いでしょう。同時に、親がいない集団に入るトレーニングも必要です。

メグシィでしていただいている療育を家庭内でもやろうと思うのですが、外ではやるのに家では全くやってくれません。

やるなら少しずつを心掛けてください。外でやっていることを毎回家でやろうとすると、親も子どもも大変です。私だって病院でやっている仕事を家でもやれといわれたら全然気が進みませんからね。お子さん自身も「ここ(外)だからやる。家では、できるけどやらない」と使い分けしています。「大変なことは専門機関にお任せして」と割り切って、親が全てを背負い込まなくてもいいんです。療育機関だけでなく学校でも色々とやってくれますので、小学校へ入ったらできることがどんどん増えていくはずです。

本もテレビもすごく近づいて見てしまう。見えないのかなと不安になってしまいます。

視力の検査結果に問題がなければ、刺激を近くで感じたいということでしょう。縦横斜めと色んな角度から眺めたりするのが面白かったり、映像ではなくモーターの機械的な音を聞いている場合もあります。その子のこだわり行動のひとつとして受け止めてあげてください。

特定のものしか食べなくて困っています。

小学校に進むと給食で食べざるを得なくなるので、あまり心配しすぎなくてもいいと思います。学校でも無理強いはしませんが、一口ずつでも食べられるようにしてくれますので、母親だけが無理して頑張り過ぎなくても大丈夫です。

コップが変わると、途端に水分を摂らなくなります。さらに、特定のドリンクをペットボトルから注ぐところを確認しないと飲んでくれません。このこだわり行動はどう受け入れたら良いでしょうか。

このお子さんは、敏感で特にこだわりが強いようです。危険を及ぼしたり、周囲に迷惑がかかる場合はカットしていく必要がありますが、そうでなければ許容してあげて、何でもかんでも矯正しようとしなくてもいいと思います。

ものを本来とは違う使い方をします。正しく教えたいのですが聞いてくれません。

大人とは違う感覚を持っているので、本来の目的とは違う遊びをすると子どもは面白がります。使わせたくないものは視界に入れないというのが基本ですが、動かせないものの場合は教え方にコツがあります。例えば電気のスイッチをパチパチして遊んでいる場合、単純に「ダメ」とやめさせるのではなく、音、指の感覚、点いたり消えたりする光など何が好きでその行動を取っているのかを見て、代用品を与えるといいと思います。ホームセンターでスイッチのパネル部品を買ってきて、遊ばせてあげると良いでしょう。

ある程度のこだわりは許容しようと思うのですが、どうしてもやめさせたいこだわりについての矯正方法を教えてください。

「ダメ、ダメ!」ときつい言葉を発すると、子どものイライラは増幅するだけです。口ではなく、×印など視覚に訴えるような方法を取ってください。否定の言葉ではなく「代わりにこれを使おうね」という声掛けを行うと、イライラを抑えながら行動を変えてあげることができます。よく言ってしまいがちな「手で食べるな!」「ちゃんと座れ!」はダメです。手で食べたり、床で食べるなど、親の許容範囲を広げることも大事なことといえます。子どもじゃなくて、まず親が変わること。自閉の子はフィルタが違うので、例えば「高いところに上っちゃダメ!」ではなく「高いところの景色が見れて良かったね」と解釈してあげると良いでしょう。自閉の子は特に「ダメ」という言葉に過敏です。ダメ出しではなく「〇〇しましょう」に変換して声を掛けてあげてください。「走るな!」は「歩きましょう」に、「登るな!」は「降りましょう」に変えて話してみてください。

同じことを繰り返しているのが気になります。

内容にもよりますが、同じことを繰り返すのは悪いことではありません。イチローが打席に立つ前のルーチンと同じです。不安があるから強いこだわりを持つ。不安を消すために行っているこだわりを否定されると、子どもはますます不安になってしまいます。

やる気のスイッチがなかなか入らず困っています。

いきなり本題に入るとやる気は出ません。好きなことからきっかけを作ってあげることが大事です。

表情が乏しいので、我が子の感情が分かりません。

見ているだけではなく「楽しいねー!」などと前向きな声掛けをして、外から教えてあげることも大事です。コミュニケーションを取る際は、目を合わせることが基本。一回ごとに“落ちている視線を拾う”作業が必要です。

療育に参加しながらの声掛けで特に印象的だった言葉

     
  • 同年齢の子と比べるのではなく、1年前、半年前の我が子と比べることが大事
  • 気持ちを安定させるには寝る時間と起きる時間を一定にすること
  • 母親だけ、家庭だけで無理して頑張ろうとせず、専門機関に頼ることも必要
  • 「ダメ」の合図は、口ではなく、×印など視覚に訴えるように
  • 否定ばかりでは子供をかえってイライラさせるだけ。 「ダメ」ではなく「〇〇しましょう」に変換して。 例:「走るな」→「歩きましょう」 「登るな」→「降りましょう」
  • 子供じゃなくて、まず大人が変わる
  • 表情が乏しい子には、やっているのが楽しいことを自覚させる。 『楽しいねー!」などと外部からの声かけが重要