2019年2月23日(土) 石川充先生 保護者対応記録

LD(学習症)の疑いがあり、学年が上がるにつれ「集中するのに時間がかかる」「思い込みや聞き違いから、友達の言動に批判的になる」などの心配事が増えてきました。小学3年になり、学校からも度々連絡が来るようになりました。

学習時に様々な困り感が出てきているようですね。低学年のうちはそんなに目立たなかったものが、学年が上がるにつれ顕著に現れてくることがあります。小さい頃は親や教師の配慮があれば何とか防げた学習の困り感も、大きくなるとだんだんと手に負えなくなってきます。集中に時間がかかるのは、上手なやり方が分からずアプローチが人より長いだけです。「全く集中しない」のではなく「集中に時間がかかる」のであれば、やろうとはしているはずなので、まずはやろうとしていることを認めてあげてください。友達への批判的な言動は、今まで様々な場面で苦労しながら頑張ってきた分、防衛反応が出ているからだと思われます。何回言っても分からない時は、何度も注意するから分からなくなるのであって「分かりやすく言ってあげる」ことを心掛けてみてください。

学習時、知的な面より情緒的な面で問題になる傾向があります。

こうした子は特に、言葉だけの指導では勉強が嫌になってしまいますし、2つも3つもいっぺんに“バババッ”と言われると頭に入りにくく、イライラが増幅してしまいます。情緒的な部分は本来、小学1~2年のうちにケアしてあげないと「口は達者だけどニュアンスが伝わりにくい子」になってしまう恐れがあります。学年が上がると、計画的ではなく衝動的に行動しがちになります。その点を理解しておかないと、投げやりな子になる可能性があります。現在具体的に配慮した方がいい点としては、ノートを写すことは出来ても細かいところに注意が向かない特性があるようなので、字の間違いがないかなど、誤学習していないか注意深く見てあげるようにしてください。

目で見て「大変」と感じても、何が大変なのか理解できていないようです。周囲に上手く説明もできないので「大変」と感じるとすぐにあきらめがちです。

見た目で「大変」と判断したことに本人が向き合うための解決策は、スキルを上げることです。スキルの上げ方には大きく2通りあって、まず1つ目は「出来ないことを出来るようにする練習」があります。そして2つ目は「世渡りのスキルを高める練習」をすること。目で「大変」と判断したことに対して、ストレートに「出来ない!」「分からない!」の否定語ではなく「もう少し時間をください」とか「ちょっと待って今考えるから」とワンクッション置いた方が、心の傷は小さくなります。小学3~4年生になってくると、出来る子は出来ない子の批判をしなくなります。反面、出来ない子ほど自分と同じように出来ない子に対して文句を言いがちになる傾向があります。どちらかというと1番目の「出来るようにする練習」も大事ですが、2番目の「世渡りのスキルアップ」の方が上手に生きていくためには大切なことだといえます。

周りの大声を怖がります。来年度のクラス編成では学校への配慮はどのようにお願いしたらいいですか?

それは、配慮が必要です。周りが騒がしいと集中が途切れる子は、多動の子と一緒のクラスにはしない方がいいです。元気のいい子がそばにいると怖気ついてしまいます。「合理的配慮」で学校側も調整してくれるはずです。

自分の興味があることには反応が早いのですが、集中して取り組むまでとても時間がかかります。

「出来ないこと」「やってほしいこと」に目を向けさせるのではなく「出来ていること」「これまでにやれたこと」をとことん褒め、自尊心を高めてあげてください。出来たことを称賛し「やればできる」という自信を積み重ね、学習したくなる空気をつくってあげてください。集中のスイッチを入れるためには、自分で段取りを考え、パターンを見つけられるようになることが大事です。集中させたいなら「どこに集中すればいいのか」を具体的に教えてあげると良いでしょう。   ワーキングメモリーについても平均を少し下回っているようですね。テレビ番組『はじめてのおつかい』で子どもが「にんじん・キャベツ・卵・牛乳…」みたいに買う物を復唱しながら店に向かう光景、よくありますよね。でも犬に吠えられたりして途中で何か刺激が入ってしまうと、ワーキングメモリーが弱い子は記憶を再構築するときに違うものが入ってきてしまいます。また、記憶を保持しながら次の段取りに向かうことも苦手なので、情報の整理、記憶のサポート、視覚的手掛かりの提供、注意のコントロールといった配慮が必要となります。

言葉は出ませんが興奮すると声のトーンが高くなります。遊びの中での感情の表出はあります。

(恐竜のフィギュアで遊んでいる様子を見ながら)こうした人形遊びでも感情を出せているのでいい遊び方だと思います。

以前の検査で「LD(学習症)の要素がある」との結果が出ました。特に、国語の文章を読み解く問題が苦手なようです。

そうなると文章問題だけでなく、読書感想文なんかも苦手ですよね? 今は語彙が少ないので、単語の意味は理解出来ていても、文章化された時の意味を読み取ることに難があるようですね。まずは「(物語の主人公は)この時どう感じたと思う?」「ここでこんなきっかけがあったから、こんなふうに(主人公は)行動したんだね」というように、1つ1つ読み解き方を具体的に問いかけながら学習を進めてみてください。

「褒めて伸ばそう」と心掛けてはいますが、小学3年生になり、自分と周りの差に気付き始めてきています。授業中に発表する時も、先生の目を気にするようになりました。

褒めて自信を持たせることはとても大事なことなので続けてください。この子の場合は、高い能力を持っていますが、ことばに関する部分で足を引っ張られているため、身の丈を下げてしまっています。学習能力の高い部分を生かして、子どもを「どう土俵にのせるか」を考えなければいけません。大相撲で関取が場所中の15日間「勝っても負けても、また翌日気持ちを切り替えていかに気持ち良く相撲を取れるか」と同じように、1日1日気持ち良く土俵に上がれるよう子どものモチベーションを高めてあげてください。これから5~6年生になった時、クラス内でやる気のなさを前面に出してしまうと、周りから「出来ない子」と思われ、自尊心が下がってしまいます。すぐに「無理!」と投げやりになるようなら、そこは介入してモチベーションを上げてあげると、本来の力を発揮することができます。

テンションが上がるとじっとしていられず、対人面で抑えが聞かなくなります。

イソップ童話『北風と太陽』の考え方で、無理に抑えつけたり、厳しく注意するのではなく、柔軟に対応することが大事です。集団の中での折り合いのつけ方を学んでほしいと思います。勉強でイライラしたり、気持ちの高ぶりが止まらない時は、クールダウンして気持ちを整えてから教室に戻るなどの対応が適切でしょう。どこにも逃げ場がない時は、例えば「ちょっと待ってください。少し机に伏せて考えさせてください」などと相手に断って気持ちを静めると良いでしょう。

ゲームのさせ方について悩んでいます。

最低でも就寝1時間前までにゲームを終わらせないと、頭がごちゃごちゃになり、良い睡眠をとることはできません。ゲームを「長時間やっている子」「短時間で時間を決めてやっている子」「全くやらない子」のどのグループが最も成績が伸びるかを調べたある統計では「短時間で時間を決めてやっている子」が一番成績を伸ばしているそうです。「全くやらない子」と思われがちですが、全くやらない子は自分の意志ではなく家庭からの強制的な抑圧がほとんどのようです。「短時間で時間を守ってやっている子」は、自分で自分を律することができますので成績も伸びやすいとのことです。ゲームを毎日4時間以上やっている子は、進学校はないといわれています。4時間以上やっていれば、当然勉強する時間なんてありませんからね。プレイ時間と時間帯を上手くコントロールしながら、ゲームから離れる時間をつくってあげることも大事です。基本的には、夜9時以降のゲームはさせない方が良いでしょう。

授業中、座っていられなくて困っています。

1コマ45分の授業を5回も6回も繰り返すんだから、集中が続かずに座っていられなくてもしょうがないですよ。私だってセミナーに行っても、集中が続くのってせいぜい120分くらいですから。小学1年生の集中が続く時間って15分くらいですよ。それを日々の訓練でだんだんと増やしていけばいいんです。先の段取りが分かるようになってくると、座っていられるようになってきます。出来なかったり不安を覚えて気持ちが落ち着かない時は、先々の予定を言葉ではなく目で見える形で教えてあげると良いでしょう。

おしっこが我慢できません。1人で好きなことに熱中してしまったり、集団活動の中でタイミングを逃すと、どうしてもトイレに行けません。3年生のとき友達に「実は漏らしてしまった」と話したらすごく笑われ、そこから恐怖になっています。(小6男子・本人より)

大丈夫ですよ。君だけが特別なわけではありません。今、小学6年生でも全体の4%はおねしょしているといわれています。何かに熱中しているときでも、たった2分あればトイレに行って戻って来れます。集団の中でトイレに行くタイミングを逃してしまいそうなときは、活動の前に必ず行っておくクセをつけるといいと思います。

休日もどこかに出掛けると知り合いの誰かに見られているような気がして、1人でいる方が好きです。 (小6男子・本人より)

一言でいうと「デリケート」なんですね。決して悪いことではないです。でも、心配するほど、周りの人はあなたのことを見ていません。慣れてくると緊張しなくなりますよ。

自分の得意な分野の話だとしゃべれますが、急に振られるとパニックになってしまいます。(小6男子・本人より)

自分の気持ちを外へ表現するときは、タイミングの取り方が重要になります。場の空気を上手に読んで、自分が会話に入っていける隙間をみつけられるかがカギになります。

最近、女子が話しかけてくれなくなり、自分からも気軽に話しかけることができません。すごく寂しいし、そのことで悩んでいます。(小6男子・本人より)

女子は男子より先に大人になります。4年生ぐらいから女の子は、男の子との間に壁をつくるでしょ? 男の子はずっと“ガキんちょ”のまんまでいる子が多いので、だんだん女子に「あんたには関係ないでしょ!」とか、ちょっと触れただけで「触んないでよ!」とかって言われますよね? そのことで悩んだり寂しく思うのは、君が相手を「女子」と意識しているから。大人になってきている証拠なんです。子ども同士なら男女関係なく距離を縮められます。でも大人になって、気軽に初対面の女性に話しかけると「チャラい奴」「変な奴」と思われてしまします。だから、男女の壁は「大人を感じる」自然なことなんだと思ってください。

休み時間中、クラスの人気者のところにばかり人が集まり、その輪の中に入っていけません。「あのー」と入っていこうとしたことは、何度かあるんですが誰も僕に目を向けてくれませんでした…。(小6男子・本人より)

まず観察してみることから始めてみましょう。その時、中心にいる人ではなく、外側で取り囲んでいる人たちを見てください。なんとなく話を合わせている子、笑っているのに楽しくなさそうな子など、色んな人がいると分かるはずです。そしたら、外側のどの隙間から入っていけば輪に加わりやすいか見えてくるはずです。今あなたが輪に入っていけないのは、突然「あのー」と話しかけるからです。盛り上がっている最中、急に「あのー」と入って来られたら「何!?」って会話が止まってしまいますよね? そういう時は、声掛けをしないでみんなと一緒に騒ぐことをきっかけにすると入っていきやすいですよ。みんなが「ワァー」と盛り上がってたら、横で一緒に「ワァー」ってやってみましょう。話を聞いて「へぇー、すごいね!」って言うだけで距離は縮められます。自分が輪の中心になって盛り上げるのを目標にしなくてもいいんです。そんなこと考えてばかりだと、大きな負担になりますから。観察から始めて、輪の外側から入っていける隙間を見つけて、話に相づちを打って、少しずつ距離を縮めていきましょう。